アメリカの聖アンタニ病院のロビーには、犬を讃えた青銅の飾り板が取りつ けられています。
シェパードのシェプは、イリノイ州の小さな村でマクマーンさんと二人で暮らしていました。 幸せな日々が一転したのは、1924年。 マクマーンさんが、階段から転落してしまいました。駆けつけた近所の人に
病院へ運ばれ、手術室に通じるエレベーターの前でようやく意識を取り戻し ました。 マクマーンさんは、心配そうについてこようとするシェプに「シェプ、 お前はここで待っていなさい」そう言って、エレベーターの中に消えました。
けれどそのまま二度と戻ってきませんでした。 それでもシェプは、ご主人の言いつけ通り、エレベーターの前で待ち続けま した。
「シェプ、家へお帰り。ご主人はもういないんだよ」 誰が何といっても、エレベーターの扉を見つめて、動こうとはしませんでした。 病院にいついてしまったシャプは、みんなから可愛がられ、患者と中庭で遊
ぶようになりました。 でもエレベーターの開く音がする度に、シッポを振ってエレベーターの前へ 駆けて行きました。そのたびに期待は裏切られましたが、決して待つことを
止めませんでした。 1936年、シェプは病院の前で車にひかれ亡くなりました。 「ここで待っていなさい」 ご主人と約束したときから12年の歳月が流れた、
暑い夏でした。 「ジェフ、やっとご主人に会えるね。」 みんな口々にそう言いました。 ひたすら約束を守ったシェプへの、神様のご褒美だったのかもしれません。
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